株式会社冠婚葬祭総合研究所では、平成29年5月15日(月)から18日(木)までの4日間、互助会保証株式会社の委託により、香港で開催された「アジア葬儀・墓地博覧会Asia Funeral and Cemetery Expo & Conference(通称AFE)2017」を視察するとともに、香港の斎場、墓地、納骨堂、火葬場の現地視察を実施し、この度視察の詳細を報告書に取りまとめました。
香港が中国に返還されてから20周年を迎える今年、「アジア葬儀・墓地博覧会(AFE)」は、5月16日(火)から18日(木)の3日間の日程で、湾仔(ワンチャイ)の香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)にて開催されました。2008年に始まり、2015年以降は隔年で開催されている大規模な国際会議博覧会です。今年はラテンアメリカ諸国からも初の使節団が訪れるなど、38の国と地域から2,750名の来場者がありました。
市場調査会社のEuromonitor社のデータによると、アジアの葬祭市場規模は約626億ドルにのぼり、中国がその約半分を占めています。日本同様アジアでも高齢化が進み、葬祭市場は着実に成長しています。講演では、各国で成功を収めている葬祭事業者の代表の方々から、それぞれの市場での課題や取組み、今後の展望を伺うことができました。
博覧会の他、香港の葬祭事情の現地視察を行うために、香港で4か所の墓地・納骨堂を運営する華人永遠墳場管理委員会を訪れ、ケープ・コリンソン墓地を視察しました。また、香港人口約740万人、年間死亡者数約4.7万人に対して、計7か所を数えるのみの斎場(殯儀館)の一つであり、香港島北東部に位置し、最も歴史がある民営の香港殯儀館と、香港政府が運営するケープ・コリンソン火葬場(敷地内に納骨堂・散骨用庭園も含む)を訪れました。
中国・香港では清明節(二十四節気の一つ。新暦4月5日頃)と重陽節(旧暦9月9日。新暦で2017年は10月28日)の年2回、墓参者で墓地が大混雑します。道路の渋滞を緩和すべく、警察は状況に合わせて、3段階の交通規制(道路封鎖)を行います。
香港は、かつては中国本土と同様、土葬を望む文化でしたが、土地が狭いことから、1970年代以降、政府(当時は香港政庁)が市民に対し火葬を奨励しました。2014年のデータでは火葬率は90.2%にも上ります。深刻な墓地不足の対策として、遺骨の埋葬方法についても、墓地から納骨堂に移行し、更には海洋散骨や庭園散骨なども推奨され、死者を祀るためのスペースを節約する試みが進んでいます。
今回の視察にあたり、ご多忙の中、当社客員研究員、韓国大田保健大學校 葬禮指導科の張萬石教授にご参加いただき、ご指導を賜りました。心より感謝申し上げます。
①山間に所狭しと並んだ墓地
②庭園に散骨した故人の名前を刻むメモリアルプレート
③墓参者による混雑緩和のために、墓地管理会社が敷設した歩道の渋滞の様子
④死後の世界で困らないようにと、様々なものを模した紙製の副葬品と共に火葬する
⑤華人永遠墳場管理委員会 ケープ・コリンソン墓地内 柴湾(チャイ・ワン)第三霊灰閣にて
⑥ミニチュア棺:「官」と音が同じことから、出世を願う縁起の良い贈り物として、土産やプレゼントで贈る風習がある
⑦籐で編まれた骨壺と棺。山東省で作られ9割が輸出される。輸出先の55%は西ヨーロッパとのこと。