「葬祭単価の低下が互助会業界に与える影響」の調査研究

2016年5月10日 調査・研究

「葬祭単価の低下が互助会業界に与える影響」をテーマに株式会社野村総合研究所に研究委託を行い、平成28年5月10日に報告書として提示されました。

葬祭市場は今後20~30年間は需要が増加していくと見込まれる中、葬祭事業は互助会事業の中心的な事業となっています。しかしながら、核家族化、死亡者の高齢化、地域コミュニティの崩壊等を背景とし、「家族葬」、「直葬」が増加するなど、消費者ニーズは多様化してきています。この結果、施行規模の小型化、簡略化に伴い、葬儀単価の低下が業界全体の問題として認識されており、葬祭事業の発展、互助会収益の維持・拡大のためには、葬祭単価について具体的な対策を講じることが重要な課題となっております。

本研究は、上記の背景を踏まえ、葬祭単価の低下をもたらす諸要因とその背景の分析、及びそれを踏まえた葬祭単価の低下が互助会業界に与える影響に係る調査研究を実施したものです。

「葬祭単価の低下が互助会業界に与える影響」の調査研究報告書

<報告書サマリーの抜粋>

葬祭単価分析を踏まえた今後の見通し

【全国の葬祭単価の見通し】

  • 今後2030年に向けて葬儀件数は増加が続く一方、葬祭単価は減少が続く
    葬儀件数は2015~2030年で20%以上の増加が見込まれる一方、葬祭単価は11.7%減少すると予測された。その結果、売上高(葬祭市場規模)は8.5%程度の増加に留まる。その主要因として、高齢化に起因する会葬者数の減少率の大きさがあげられ、これが飲食接待費・葬儀実施費双方の下落に影響していると考えられる。
  • 葬祭業界が2015年の市場規模を維持するためには、2015年比の単価減少率を、2020年までは約10%以内、2030年までは約20%以内までに抑える必要がある
    今後葬祭件数が増加する一方で単価の減少は続くという現状の予測を踏まえ、葬祭市場を現状の規模で維持される単価下落率の下限を算出したところ、葬祭単価が、対2015年で2020年までに8.6%以上、2030年までに18.6%以上減少すると、葬祭市場は縮小に向かうという結果が算出された。

 

【地域別の葬祭単価と実施件数の見通し】 ※増減率は2015年~2030年の値

    • 一都三件や関西では葬祭単価の減少率がより大きい一方、実施件数の増加率も大きい。それらに対して北海道・東北や九州・沖縄などでは単価の減少率は比較的小さいものの、実施件数の増加率も小さい。その結果、”葬祭単価×実施件数“で算出される売上高(葬祭市場規模)は1%~18.5%の範囲で、現在よりも増加するという予測結果が算出された。
      • 北海道・東北:単価は7%減少、件数は12.1%増加、売上は3.5%増加
      • 関東:単価は9%減少、件数は16.1%増加、売上は1.1%増加
      • 一都三県:単価は4%減少、件数は37.2%増加、売上は14.7%増加
      • 中部:単価は6%減少、件数は25.1%増加、売上は15.6%増加
      • 近畿・中四国:単価は5%減少、件数は21.4%増加、5.0%増加
      • 九州・沖縄:単価は1%減少、件数は15.6%増加、売上は10.9%増加

 

  • 北海道・東北、九州・沖縄、関東(除一都三県)の各地域では、その他の地域と比べて単価減少による市場規模縮小の懸念が大きく、今後収益のハードルがより高くなることが予測される。

 

葬祭単価の変化を踏まえて互助会が取組むべき方向性

【互助会の強みと課題】

    • 葬祭業界の主要事業系列別(互助会系、前葬連系、JA系、その他)における各特性を比較分析すると、互助会系は、個々の事業者規模が比較的大きく、積立方式により高単価の葬儀を割安で実施できる強みを持つ一方で、新規会員の獲得や価格・規模等における顧客ニーズへの柔軟な対応にはやや課題があるといえる。

 

  • 上記の強みと課題、前章までの外部環境分析、及び葬祭単価の将来予測結果を踏まえて、互助会を取巻く環境をSWOT(強み・弱み・機会・脅威)の視点から分析した。その結果として、互助会が今後注力すべき方向性として、「提供サービスの高付加価値化への注力という従来の強みの強化に対して更に注力する」という方向性と、「高付加価値路線に加えて安価路線でもシェアを拡大していく“2ライン”での対応を強化する」という、2つの方向性が浮かび上がってきた。

 

【企業戦略的関連を交えた互助会が取組むべき方向性】

    • 価格競争を既に経験している総合スーパーや化粧品などの業界では過去に、市場が拡大するとともに、低価格を武器とした競合企業・業態が登場し、価格競争に陥った歴史がある。また、近年は少子高齢化に伴う市場の伸び悩みも競争激化に拍車をかけている。葬祭業界においても、今後の人口動態予測から推測する限り、いずれ市場成熟化の時期を迎える。他業界の先行事例は、それらの状況にどのように対処すべきかの指針となる。

 

    • 今後互助会業界が、葬祭単価の減少を踏まえた上で取組むべき方向性を企業戦略の視点からまとめると、上記した2つの方向性に、企業規模を生かした「コストリーダーシップ戦略」を加えた3つが考えられる。

 

  • 互助会の各企業はそれぞれが置かれている状況を踏まえ、いずれかの方向性を選択し、注力していくことによって、今後の葬祭単価の減少にうまく対応しながら収益の拡大を目指すことが可能であると考える。

「葬祭単価の低下が互助会業界に与える影響」の調査研究

本件に関する資料
野村総研葬祭単価.pdf